ジンバブエのスタジオ風景


ジンバブエの日没は19時前後、
日没の少し前、18時頃、
ジンバブエの音楽スタジオに遊びに行った。

音楽スタジオとは、
音楽家たちが、
新しいCDのレコーディングをしたり、
作曲したりしているところだ。

スタジオには、
2人の音響エンジニアと
1人のベーシスト(ベースギターの演奏者)がいた。

彼らは、
ジンバブエでも10本の指に入る有名なミュージシャン、
“スルマニ・チンベツ”の新曲をつくっている最中だった。

スルマニ・チンベツ

彼らが曲をつくり、
そしてスルマニ・チンベツの意見が入り、
最後に、
その曲にスルマニ・チンベツが歌をのせて完成らしい。

ベーシストはとても腕がよくて、
ベースギターを超高速で演奏して、
アフリカ独特のリズムをはじき出す。

エンジニアたちも、腕と耳の良い、
一流のエンジニアたちだ。

ベーシストが、
「ここは、こういったメロディを入れるべきだ。」
とベースギターをかき鳴らす。

するとエンジニアの1人が、
「ここの音と、ここの音は、1拍、間をおいてから、
少し遅れた感じにするべきだ。」
とか、
「この最後の2音はミュート(消音)するべきだ。」
とか、
お酒を飲みながら、
話し合ったり、
音を録音したりしている。

途中、ベーシストが遊びだして、
ベースギターを、
両手の指を使って演奏しはじめた。
そして今度は、
ウォッカの瓶をベースギターの弦にあてて、
瓶で演奏しはじめた。

エンジニアの1人が、
手のひらを大きく広げて、
ベーシストの顔を上から下へと、
(おいっ!)
というような感じで強くなでて、
「Don’t make noise! (雑音やろう!)」
と言った。

ベーシストが、
僕に、
「he is troublesome. (こいつは面倒くさい奴なんだ、そう思うだろ?)」
と、助けを求めてきた。

エンジニアの1人が、ベーシストを指さして、
「スミ、日本にこんなやつ、いるか?」
と聞くので、
「まれにいる。」
と答えると、
(ガッハッハッハッ。)
とみんなが笑った。

エンジニアの1人が、
「俺はマブクに住んでるんだけど、
いつか遊びに来てくれ。」
と言ったので、
僕が、
「マブク?
その地名は聞いたことがあるな。
マブクはクムーシャ(水道や電気が通っていない、とても田舎の村)なのか?」
と聞くと、
どうやらマブクはクムーシャではなかったらしく、
全員が大爆笑しはじめた。

もう1人のエンジニアが、
「そうだ!マブクはクムーシャだ!」
と嬉しそうに叫ぶ。

マブクに住んでいるエンジニアが、
「ノー!マブクがクムーシャだったらチトゥンギザ(ジンバブエの町)だって
クムーシャという事になってしまうぞ!」
と身振り手振りを加えて反論。

そんな事をしながら夜も22時を過ぎたので、
(解散して帰ろう。)
という事になった。

ベーシストは酔っぱらってフラフラしている。

エンジニアの1人と僕が車に乗って、
あとの2人が車に乗りに来るのを待っていると、
もう1人のエンジニアが、
クスクス笑いながらやってきた。
そして、
「Ari kuchema (あいつ、泣いてるぞ。)」
と言って車に乗り込んだ。

しばらく待つがベーシストはやってこない。

「ベーシストはどこだ?」
と聞くと、
エンジニアの1人が暗闇を指さす。

どうやら、暗闇で見えないだけで、
外で、座って泣いてるらしい。

しばらくすると、
ベーシストがやってきて車に乗り込み発進。

一流のミュージシャンでも、
一流のエンジニアでも、
自分を飾らず、
プライドを誇示するわけでもなく、
みんなが楽しむ、
それがジンバブエである。

補足:クムーシャ、という言葉は、基本的には生まれ育った故郷を指すことが多いです。
ただ、みんな生まれ育った故郷は、水道や電気が通っていない草原の中の田舎の事が多いです。
なので、ジンバブエ人は、
クムーシャ、というとそういう場所を連想する人が多いです、
なので、今回の文章の場合のクムーシャの説明を
“水道や電気が通っていない、とても田舎の村”としています。