ムセキワ・チンゴーザ(Muekiwa Chingodza)


ムセキワ・チンゴーザ

1970年ムレワ地方の
mwangara(ムワンガラ)村生まれ。

トーテムはエランド

ムビラを先祖代々演奏してきた“チンゴーザ一族”の末裔、
“5歳にしてムビラの演奏をはじめた”と言われるムビラの名手。
幼いころからショナの儀式でムビラを演奏し、
青年期にはジンバブエの名門・プリンスエドワード校でムビラを教える。

その類まれなる才能が海外のアーティストたちの注目を集め、
世界で有名なムビラ奏者となる。
彼が欧米でのツアーを成功させてきた理由には、
その才能だけでなく、
子どもから大人にまで愛される気さくな人柄がある。

ムセキワ・チンゴーザ氏インタビュー

ムセキワ氏に宿る精霊

私はムワンガラ村で育ちました。
私はムビラの音を聴き自分自身でムビラを学んで、
5歳の時にムビラを弾き始めました。

○あなたには、
あなたのひいおじいさんが宿っている、
と聞きました。
ひいおじいさんがあなたに宿ったのは、
ショナの儀式の時だったのですか?
それとも他のタイミングだったのですか?

それは、
儀式の時ではありませんでした。

私は、小さい頃、私の体が病気のような状態になりました。
親族は私を、
病院、そして伝統的な治療師のもとへと連れていきました。

伝統的な治療師のところへ行った時、
その治療師は、
私の体から悪い精霊を追い出すために、
伝統的なハーブを使用しようとしました。

しかし、ハーブを使用する直前に、
声が私の体を通して話し出したのです。

「私の名前はチンゴーザです。
私は、ムビラが必要です。」
と。

治療師のもとに私を連れて来ていた叔母とお姉さんは、
もう、今では2人とも亡くなりましたが、
伝統的な治療師に質問されました。

「彼が何を言おうとしているのか分かりますか?
この小さな男の子の言った意味が分かりますか?」
と。

彼女たちは答えました。
「チンゴーザは、私たちのラストネーム(苗字)、
そして”チンゴーザ”とは私たちのひいおじいさんを指し示します。
この子を連れて帰ります。
そして両親のもとに連れていき、
彼が何を話したのかを両親に伝えます。
私たちは、これ以上、何もするべき事がありません。」

そして叔母と姉は、
私を家族のもとに連れて帰りました。

そして、家に帰り、
叔母と姉が、家族の者たちに、
何があったのか話しました。

その時は、
まだ私のおじいさんは生きていたのですが、
おじいさんが、
「私たちはこれらの物を用意する必要がある。」
と言い、
木の皿と伝統的な敷き物を用意し、
伝統的な敷き物の上に私を座らせて、
私の脇に木の皿を置きました。

そして、私のおじいさんが、
私の前にやって来て、
手を叩きまはじめました
(人に敬意を示す時、ショナの人は、その人の前で手を叩く)。

そして棒を木の皿に置き、
手を叩きながら、
「父よ、ようこそ帰って来ていただきました。
私たちはあなたに伝えたい。
私たちはあなたを愛している、
私たちはあなたに、
あなたが宿っているこの男の子の体を
見守っていただくようお願いしたい。
あなたはすごい人物です。
私たちは、
あなたが生きていた時に日常的にしていた事、
私たちが知っている事をしようと思います。
私たちは、伝統的なお酒を醸造して、
あなたが戻ってきた事を歓迎する儀式を開催します。
そして、
あなたが欲しているムビラを手に入れるでしょう。」

両親は”ムクチャ”という名前の、
ムビラ奏者でありムビラ制作者のところへ行き、
ムビラを買いました。

そのムビラは、私のために買ったのですが、
私のひいおじいさんのため買ったのでした。

そして、
特別な儀式を開催しました。

その儀式のために親族は、
青い布、
レッツォ(ショナの伝統柄の赤い布)、
ライオンの柄の布、
を、買ってくれました。

儀式では、儀式の参加者の1人が、
それらの布を私の体にかけ、
私に、ムビラを演奏するよう言いました。

それからは、
親族は1年に1回、
私に宿るひいおじいさんのための
儀式をするようになりました。

“ひいおじいさん、
私たちはあなたの加護が必要です。
私たちはあなたの支えが必要です。”
と伝えるために。

○その、ひいおじいさんが宿った時、
というのが5歳の時だったのですか?

そうです、5歳の時でした。

○そのムビラ、
その時にあなたの両親があなたのために買ったムビラは、
今、ここにありますか?

「私は無くしたのです!
私は、アメリカで、そのムビラを無くしたのです!」

オレゴンカントリーフェアの時でした。
70000人の人々が、
そのフェアにはやってきます。
そのフェアでは、音楽や、それ以外、
いろいろな催しが実施されます。

私は、その際、
森(in the woods)の中で座っている時に、
そのムビラを無くしたのです。
私は私のムビラに何が起こったのか分かりませんでした。

その後、
私のムビラが無くなった事を深く考えました。
そして、私は理解しました。

私は、私のひいおじいさんが使っていたムビラを持っています。

ひいおじいさんから受け継いできたムビラ

このムビラは、ひいおじいさんが、
戦時中に林(in the bushes)の中で見つけたものです。

私たちは、
このムビラを誰が作ったのかさえ知りません。
そのムビラは私たちの一族に演奏され続け、
私たち一族の元にあります。

昔、ひいおじいさんが林の中でムビラを見つけました。
そして、私は、自分のムビラをに森で無くしました。

どのような事が起こったのかも分からない状況で、
ムビラが無くなった、
私はお酒を飲んでいたけれども、
何かを無くすような、
飲み過ぎている、という状態では無かった。

ただ、
あのムビラに何かが起こって
無くなったのです。

それを理解しました。

ムセキワ氏の成長を助けた精霊とムビラ奏者たち

○5歳の時に、
ムビラの音を聴いて自分でムビラを弾き始めた、
とおっしゃいましたよね。
その当時、
あなたの周りにはたくさんのムビラ奏者がいたのですか?

私の祖父は、とても素晴らしいムビラ奏者でした。
私の父もムビラ奏者です。

そしてherbert matema(アルバート・マテマ)、
私の父の兄弟ですが、
彼もムビラ奏者です。

チンゴーザ一族はムビラの一族として、
人々に知られています。

○私は、あなたのひいおじいさんが、
チャミヌカ(ショナが信仰する高位の精霊、
1800年代にパシパミレという男に宿り、
ンデベレとの戦いを率いた。
白人がやって来ることを予言した、
と言われる。)
に対して祈るムビラ奏者だった、
と聞きましたが、
あなたのお父さんは、
何の精霊に対して祈るムビラ奏者なのですか?

私の父は、
たくさんのいろいろな精霊に対して祈るムビラ奏者です。

例えば、私自身は、
子供の時、
ビリナガニレ(ショナが信仰する高位の精霊、
象をトーテムに持つ氏族の精霊で、
この当時、1人の女性に、ビリナガニレの精霊が宿っていた)
のところに行きながら育ちました。

そこには神殿がありまた。

ムビラ奏者は、普通、神殿に行き、
たくさんの精霊たちにお祈りをします。

そして、私の父はゴンボエの精霊(古代霊)を体に宿しています。
その精霊は、太古の精霊の1人です。

その精霊はビリナガニレの弟で、
トーテムはコレコレ(トーテムが象の象氏族)です。

○なるほど、それではそのような環境で、
自分でムビラを習得していったわけですね。

そうです、私のおじいさんは、
こう言っていました。
「お前のムビラの腕前は、私のお父さんの腕前と同じだ。」
と。

私がムビラを弾いている時で、
ムビラの曲がひとりでに私にやって来ている時、
いくらかは、
自分でも何を演奏したのか覚えていません。

そして、私はよくよく
自分の演奏を聴こうとして、
(あぁ~、さっき演奏したあのパートは私は好きだった。)
と思います、
だけど、その時には、
もう、そのパートは私の元には戻って来なくなってしまっている。

だけど、
演奏している時にちゃんと認識はできていないのですが、
私がこの曲を弾いた時には、
このパートがあらわれる、
というようなパートたちが存在している事を、
私は知っています。

○なるほど、あなたがムビラを弾いている時、
パートがやってきてそれを弾いているのですね。
しかし、あなたは何のパートを弾いているのか
分からない事があるのですね。

そうです、私がムビラを弾いている時、
私の手はムビラを持っているけど、
私は観客の1人になっているのです。

そして、私は思う。

(何だ?あれは何だったんだ?)
と、私に質問するのです(笑)。

○ビリナガニレのところには行っていたのですよね?

私の父親に宿る精霊がビリナガニレの弟です。
父親がビリナガニレのところに行くときは毎回、
私は父親と共に行きました。
なぜなら、私はムビラが好きだったからです。

そして、私の父親に宿る精霊と、
ビリナガニレの話から、
たくさんの事を学びました。

そして彼らも私の事が好きでした。
そこにいた(ビリナガニレの元にいた)、
ムクチャや他のムビラ奏者たちを含めて。

はじめて、私がビリナガニレのところに行った時、
彼らの演奏に参加する事は許されませんでした、
彼らが”この者はムビラの演奏方法を知っている”と知るまで、
演奏に参加する事は許されないのです。
ムビラの演奏方法を知らない限り、
演奏に参加する事は許されないのです。

なぜなら、彼らには彼らのムビラの演奏スタイルがあります。
(彼らと演奏する時)あなたは、
いろんな方向に行こうとムビラを演奏してはいけません、
この曲では私はここに行く、
という事を知って(明確なビジョンを持って)演奏しなければならない。

その当時、16人の奏者がいました。
そしてその16人と演奏する時には、
あなたは、その演奏する曲についてよく知らなければならないのです。

演奏に参加する時、
あなたは、他の奏者が弾いているパートを弾いてはなりません。
それぞれの奏者たちが弾いているパートの中に入り込んで、
みんなとは別のパートで、際立つパートを弾かなければならない。
そうする事により、
全ての人が、あなたが弾いている音を聴き、認識する事が出来ます。

はじめて、私がビリナガニレのところに行った時、
(ビリナガニレが取り仕切る儀式が行われていた)
彼らムビラ奏者たちが儀式での最初の演奏を終え、
最初の休憩に入りました。

彼らは、儀式の神殿から外に出て、
紅茶を飲んだりタバコを吸ったりしていました。

そして、彼らが儀式の神殿に戻った時、
私は、
(彼らに加わりたい!)
と思いました。

私が彼らに加わった時、
彼らは、私が誰か知りませんでした。

そして、私はムビラの曲に合わせて、
ダンスをしたり、手拍子をしたり、歌ったりしました。

彼らは、それを気に入りました。

「あの小さい男の子は誰だ?
彼がやっている事はすべて、
ムビラの音を引き立てている。」
と。

そして、私は、
神殿の中にある、
デゼに入ったムビラを手に取りました。

彼らは言いました。
「ムビラを弾けるのか?」

私は答えました。
「私はムビラを学び中です。」

彼らはまた言いました。
「本当に、ムビラを弾けるのか?」

私は答えました。
「トライしてみたいです。」

そして、私は彼らと一緒に演奏しました。

そして、
彼らは言いました。
「この小さな男の子には驚いた、
彼は、(ムビラの演奏において)彼が何をしているか理解している。」

私のいとこであるムクチャも、
もう今では亡くなってしまったが、
「いとこよ、あなたはとても若い。
しかし、あなたの両手は何か特別な物を持っている。」
と言いました。

その時に私が演奏したムビラの方法は、
コレコレ(トーテムが象の象氏族)のスタイルでした。

私がムビラの歴史で知っているところでは、
コレコレ一族がムビラの発明者であります。

コレコレ一族が、
夢のお告げによってムビラを発明しました。

彼らはムビラを夢からつくり、
そして雨乞いのために使ってきました。

コレコレという言葉は雨雲を意味します。

今でも彼らは雨乞いの儀式をしています。

ビリナガニレ(ビリナガニレが宿る女性)は亡くなりましたが、
今は、私の父(父に宿る精霊)が、その雨乞いの儀式の引き受けています。

しかし、そこには論議もあります。

「なぜ、コレコレの精霊がモーフに宿っているのだ?」
※モーフとはエランド氏族の者の呼び名。
ムセキワ・チンゴーザの父親はエランド氏族、
父親に宿る精霊は、コレコレ(象氏族)であるビリナガニレの弟なので、
象氏族である。

しかし、父に宿る精霊は、
人々に言いました。

「私は、私が生きていた当時、
エランドの死肉を食べた。
そのため、モーフ(エランド氏族)に宿るようになった。」
※動物の死肉を食べる事は、
通常、してはいけない事である。

また、
ビリナガニレが父に宿る精霊とはじめて会った時、
「おぉ、弟よ、よくぞ来た。」
と歓迎した、
というような事もありました。

それらの事より、
人々はコレコレ(象氏族)の精霊がエランド氏族である私の父親に宿っている、
という事を理解しています。

○あなたの父親に宿る精霊の名前を教えてもらえますか?

ムサニャンゲです。

トーテムについて

○トーテムについて聞きたいのですが。

人間が創造された頃、
人間は、まだトーテムを持っていませんでした。
1人目が創造された頃、
人間はトーテムを持っていなかったのです。

その後、人間はトーテムを授けられました。
トーテムは、ただトーテム、
というだけのものではなく、
人間がトーテムを授けられたのにはいくつかの理由がありました。

今では、
様々なトーテムが存在しているように見えます。
(※トーテムは、中央から南部アフリカに広がる、
考え方で、それぞれの人は、
ライオンや象、チーター、猿、しまうま、心、牡牛、
など、何らかの1つのトーテムを持ち、
そのトーテムに属する。
ジンバブエでは、父系伝承で子孫に引き継がれていく。
同じトーテムの者は家族と考えられており、
同じトーテム同士での結婚は認められていない。)
いや、私たちはたくさんのトーテムはもっていませんでした。
私たちは少しのトーテムしか持っていなかったのです。

しかし、タブーを犯したり、他の事があったりして、
例えば戒律を破る者がいた時、
一族の間で儀式が行われ、
何をその者がしたのかを調べて、
そして、
その者は一族から離れなければならない、
と結論が下されたら、
その者は、
家族、一族から離れなければならなくなる。
そして、
「これからは、
今までのトーテムを捨て、
あなた自身を我々のトーテムではなく、
違うもので、あなた自身を呼ばなければならない。」
と言い渡されます。

そういう事で、
トーテムがたくさん存在する事になりました。

タブーを犯す者があらわれた事によって、
人々の言う事を聞かずに、
自分がやりたいようにする者がいた事によって、
そのような事が起こりました。

ムビラの演奏について

○あなたがムビラを演奏している時、
どのようなものを感じているのですか?
なにかを感じているのですか?
それとも何かを考えたりもしていますか?

私がムビラを弾いている時、
私は戻ります。
私はその力の元へと戻ります。
私はその力を感じています、

○戻る、とはどういう事ですか?

全ての曲は、
それぞれの昔から伝わっている演奏法があります。
ムビラを演奏する者のほどんどは、
彼らが持っているムビラの技術を演奏し、
その技術をみんなと共有します。

そして、
ムビラ奏者が他のムビラ奏者と演奏している時、
彼らは他のムビラ奏者の音色を聴きます。

そして、
(このムビラ奏者の演奏は、
私と同じ曲を演奏しているが、
違う演奏スタイルだ。
この良い演奏方法はムビラの原点の弾き方だ。
私は、この曲のこの箇所は、あのように演奏するべきだ。)
などと思ったりします。
そこには嫉妬という感情はありません。
ムビラを演奏する時、
ムビラ奏者たちの持つ精霊たちは、
他の精霊に対して開いている状態になっています。

○戻る、とは起源に、祖先に戻っていく、
という意味ですか?

そうです、ムビラの曲は母親である曲があります。
この曲からこの曲が出来上がった、
というものがあります。

曲たちは家族です。

それぞれの曲は、
曲同士、
たくさんの技術を共有し合っています。

曲たちは人間のようなものです。

○日本では、ムビラを習う人たちがたくさんいます。
彼らはムビラを上手くなりたい、
と願っています。
ムビラを上手くなるためにアドバイスはありますか?

深く学んでいく事、
曲には段階、
というものがあります。

初級、
初級上、
中級、
上級
最上級

教える時は、
簡単な基礎から教えなければなければなりません。
そして、
だんだん深いところを教えていく。

あなたが曲を得たら、
その曲は、
たくさんのものを含んでいます。

たくさんの曲を習う代わりに、
習った全ての曲を、
他の人たちが気づいているろころまで深く掘り下げていく、
そのことはとても大切な事です。

そして、
他にはどんなものがこの曲に含まれているのか?
と、もっと研究していきます。

それが大切です。

○ありがとうございました!

ありがとうございます。

ムセキワ・チンゴーザ氏の演奏